生産管理の基礎知識:製造業で成果を上げるための11の手法

サプライチェーン

生産管理とは?

生産管理とは、製品の製造プロセスを効率的かつ効果的に運営・管理するための一連の活動や手法のことを指します。具体的には、原材料の調達から製品の出荷に至るまでの各プロセスを計画・実行・監視し、コスト削減、生産効率の向上、品質管理、納期遵守などを目指します。いわば、工場のコントロール役ともいえます。

生産管理の目的

生産管理の目的は、QCD(Q:Quality(品質),C:Cost(コスト),D:Delivery(納期))を守り顧客を満足させつつ、企業としての売上と利益を上げることです。

大量生産・大量消費の時代と言われた高度経済成長期と比較して、現代では顧客のニーズに合った製品を必要な時に適切な価格で届けることがますます重要となっています。また、市場はグローバル化が進み、新興国での生産体制も構築されてきました。グローバル単位での生産管理体制の構築と連携がますます重要になっています。

生産管理の11の手法とは?

では具体的に生産管理において、何から取り組めばよいのでしょうか。今回は、その基礎となる管理体制を11個紹介します。

①チーム管理

製造の現場では、さまざまな業務が複雑に絡み合い、多くの人が関与します。すなわち、チームプレーが求められます。チームワークを向上させるためには、所属部門だけでなく、工場全体として、互いにコミュニケーションを深めることが求められます。同時に、メンバーのモチベーションを高め、チームワークを促進することも重要です。生産管理としては、目標の達成度に応じた評価や報酬制度を設けることで、メンバーの意欲を引き出し、生産性を向上させたり、定期的なチームビルディング活動や教育・研修を通じて、メンバー同士の信頼関係を築き、強固なチームワークを育成することが、生産管理における成功の鍵となります。

②スキル管理

作業者のスキルアップも重要な要素です。そのためには、各人がどのスキルを、どの程度有しているかを明確にすることが1つのアイデアです。例えば、星取表ほしとりひょうを使って、特定のスキルについて(できる、教わりながらできる、一人でできる、人に教えることができる)の区分で、習得状況を可視化し、求められるスキルへの向上を図る仕組みが考えられます。

③5S

5Sは生産の基本姿勢であり、5Sを徹底することで、健全な安全管理、快適な職場づくりに繋がり、結果として、生産管理レベルも高まるという構図にあります。整理・整頓・清掃・清潔・躾のローマ字の頭文字をとって、5Sゴエスと呼ばれます。具体的には以下の通りです。

整理(Seiri)

整理は、不要なものを捨てることです。作業スペースや保管場所に不要なものがない状態を作ります。これにより、作業効率が上がり、事故や不良品の発生を防ぐことができます。

整頓(Seiton)

整頓とは、決められた場所に決められたものを置き、いつでも取り出せる状態にしておくことです。れにより、作業のスピードが向上し、物を探す時間が削減されます。

清掃(Seisou)

清掃とは、常に掃除をして職場をきれいにすることです。これにより、故障や不良品の発生を防ぎ、職場環境を快適に保つことができます。

清潔(Seiketsu)

清潔は、職場の清浄さを維持することです。不清潔な職場では、作業者の健康に悪影響が及びます。有毒な菌や有害ガス・粉塵、悪臭などの発生を抑え、清潔な職場で快適に仕事ができるようにします。

躾(Shitsuke)

しつけは、職場で決められたルールを守る習慣を身につけることです。勝手なふるまいはチームの協力を乱すだけでなく、事故に結びつく可能性もあります。そのため、定められたルールを守ることを徹底します。

④作業管理

一定の時間に対して、たくさんの製造をできた方が効率が良いという考え方が根本にあります。作業者が価値を生まない、非付加価値時間を最小化し、付加価値時間を最大化することが重要となります。

作業者の総就業時間を、付加価値時間と非付加価値時間とに分けたときに、非付加価値時間をいかに削減し稼働率を上げられるかがポイントとなります。また、付加価値時間の中でも、出来高時間と作業ロスとに分けたときに、いかに作業ロスを減らす作業改善を行い、作業効率を上げるかが重要となります。作業改善の手法としてIE(Industrial Engineering)があり、学術分野としても発展しており様々な技法があります。

⑤設備管理

どんなに作業改善が進んでも、設備が止まってしまっては意味がありません。設備がいつでも順調に稼働し、安定的に使える状態になっていればこそ、生産も安定します。日常点検は日々の稼働の前後に行います。一方で、故障が起きる前に、将来不具合が起きそうな部分を見つけるための定期設備保全も重要です。最近は、故障の予兆を捉えるシステムとして、IoTやAIを使ったシステムも登場しています。

⑥現品管理

現品管理の基本は、あるべきものがあるべき場所にあるべき状態であるということです。台帳やシステムにある情報と「もの」は一致させなければなりません。例えば、仕掛品は仕掛品を置くべき場所に、台帳管理された通りの数量で置かれていることが重要なのです。これが一致しない状態だと、探す手間や再加工する手間が増え、コストが上がり、納期を守れないといった事態に繋がってしまうのです。

⑦品質管理

品質管理は、製品やサービスが一定の品質基準を満たし、顧客の期待に応えることを目的とした管理活動です。統計的品質管理(SQC)は、統計学の手法を用いて、製造プロセスにおけるばらつきや異常を分析・管理する技術です。SQCにより、製造工程での品質データを収集し、そのデータをもとに製品の品質を定量的に評価し不良品の発生を未然に防ぎます。具体的には、不良品を次の工程に投入しない、市場に出荷しないということです。

不良品自体を工程で作らないための考え方として、QC(Quality Control)活動が挙げられます。現状把握のために、次に掲げるQC7つ道具と言われる図表が使われます。

チェックシート:データを体系的に収集するためのシート。データの収集や整理を効率化し、パターンや傾向を把握しやすくします。

パレート図:項目ごとの不良の発生頻度や影響度を視覚的に示すグラフ。問題の重要度を明確にし、重点的に改善すべき領域を特定します。

ヒストグラム:データの分布を示す棒グラフ。製品のばらつきを視覚化し、品質の一貫性を評価します。

特性要因図:問題の原因を系統的に分析するための図。品質問題の原因を見つけ出し、改善策を導きます。

散布図:2つの変数の関係性を示すグラフ。原因と結果の関連性を確認し、改善の方向性を探ります。

管理図:時系列データを監視し、工程の安定性を評価するためのグラフ。工程が正常範囲内にあるかどうかを判断します。

層別表:データをカテゴリーごとに分けて分析する手法。問題の原因を明確にし、具体的な対策を検討します。

⑧工程管理

工程管理とは、各工程の作業計画を作成し、作業指示、実績収集と進捗管理を行い、実績評価をする、一連の計画、実行指示、統制、評価の管理サイクルを回すことです。作業計画は効率的な計画を立てることが重要であり、その計画に対して実績がどう進捗しているのかを把握し、必要に応じて適宜支持することも重要となります。

各工程管理は、それぞれでPDCAを回すことになりますが、ある工程は最善になっても、全体最適とは限らないケースも考えられます。そのため、あくまで上位の生産管理と連携すべきであり、全体最適に貢献すべきです。

⑨購買管理

外部調達品のQCD管理と計画管理を行います。Q:品質管理の観点では、納入物がすべて良品となるように、外注業者やサプライヤーの納入実績を測定し、管理・指導します。C:コスト管理の観点では、納品物の原価管理を行い、コストダウンを行います。D:納期管理の観点では、例えば、納期遅延が発生した際に納期の督促を行い、管理します。一方で、納期管理を行っているだけでは、後追い作業となり対応が後手に回ります。そのため自社の生産計画やサプライヤの供給可能量を可視化し、共有できるようにすることで、事前に納期の調整や先読みした対応が可能になります。

⑩物流管理

物流管理では、大きく2つの観点があり、工場内物流管理工場外物流管理です。工場内物流管理は、工場内の導線設計を最適化して、スムーズにものが流れるようにします。工場外物流管理は、原材料を調達する物流、工場から倉庫、顧客への配送を担う物流、一度出荷した製品を回収してリサイクルする回収物流などがあります。共同配送や一筆書き輸送などを採用することや、製品に応じたサービスレベル(例えば温度帯の管理など)を設計したり、環境負荷を低減する輸送モードの選択など、考慮事項は多岐にわたります。

⑪安全管理

工場というと、3K(危険、汚い、臭い)という職場のイメージが一般的に言われます。一方で、多くの工場は「安全第一」を掲げて活動しており、安全第一の考え方も普及しています。

それを支えているのが、「安全管理」であり、作業者の安全性を確保する服装や防護具の装着させる作業管理、作業環境を安全・適切に保つ作業環境管理、肉体面・精神面両面での作業者の健康管理を中心に管理が進められます。また、「ハインリッヒの法則」(1件の重大災害の背後には29の軽傷事故があり、その裏には300の無傷事故がある)をもとに、重大事故の未然防止が進められています。

まとめ

この記事では、製造業における生産管理の基礎となる11個の管理方法を紹介しました。顧客を満足させつつ、売上と利益を上げることが求められる中で、これらの管理手法は重要となります。これらの観点が実際のものづくりの現場に貢献できれば幸いです。

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